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牧師だより

奈良基督教会「教会報:シオンの丘」

  2023年2月
「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」(マタイによる福音書7章11〜12節a)
 わたしが奈良基督教会の牧師として赴任したのは2020年4月ですが、その頃にはもう新型コロナの影響が大きく出ていました。3月から全国の学校が休校となり、4月7日には7都府県に緊急事態宣言が出されました。その緊急事態宣言は、4月16日には奈良を含むすべての都道府県に適用されることとなりました。
 1ヶ月半という期間、礼拝を休止するということは、教会にとって苦渋の選択でした。そしてその後も、あらゆる会合は開けない状態が続いて行きました。
 しかし昨年になって、少しずつではありますが「交わりの時間」が戻ってきました。キャンプやコンサート、リトリート旅などの行事だけではなく、クリスマスにはささやかな祝会ももつことができました。
 主なる神は言われた。「人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」
 これは創世記2章18節にある天地創造の場面での言葉です。神さまは第6日目に最初の人を創造された後、ふさわしい助け手を造り上げられました。
 わたしたちは様々な交わりを通して、多くの喜びを与えられます。「ひとりよりもふたりが良い。共に労苦すれば、その報いは良い。」(コヘレトの言葉4章9節)とあるように、わたしたちは隣にいる人と共に生きることで、豊かさや喜びを得るのではないでしょうか。
 その中で心に留めたい聖句として、「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」という言葉を年間聖句にしました。この聖句は「ゴールデンルール(黄金律)」と呼ばれ、わたしたちの他者との関りの根幹ともいえるものです。しかし、なかなかそうは言っても、実行できない場合が多いのも事実です。
 先日、このようなニュースを耳にしました。大雪で、電車が何時間も止まった時のことです。最初の内はみんな、「もうすぐ動くだろう」と静かにしていましたが、時間が経つにつれ、ザワザワしてきました。電車の中は満員で、冬なのに息苦しいほど暑くなってきました。「いつになったら動くんだ」と叫ぶ人や、しんどくなって座り込む人も出てきました。でも誰も、どうすることもできません。座席に座っている人たちもどうしていいかわからず、目を伏せる人、「席を代わりましょうか」と聞いたけど断られてしまい口をつぐむ人。
 そんな中、一人の若者が声をあげました。その人はこんな提案をしました。「どうでしょう、みなさん。みんなが少しずつ座れるように、10分ずつ交代で座りませんか。そしたらみんな、少しずつですが、ゆっくり休めると思います」。
 その若者の提案を、車両にいる人たちは喜んで受け入れました。そして順番に座りました。その車両から怒声は聞こえなかったそうです。
 彼も、いつ動くかもしれない電車の中で、とても疲れていたと思います。足も痛くなり、立っているのも疲れてきたことでしょう。その中で、彼は周りの人も同じようにしんどい思いを持っていることに目を向けます。そこで自分だったら椅子に座りたいから、周りの人もそうに違いない、だからみんなが座れるようにできないだろうかと考えました。そして実行したということです。
 あなたが一人でいるとき、どんなことをしてもらったらうれしいですか。あなたが泣いているとき、周りの人にどのように関わって欲しいですか。同じことを、孤独な人や悲しんでいる人にすることができれば、平安で優しい世界が広がっていくのだと思います。
 そしてその根底には、神さまの愛があります。神さまがわたしたちにまず、あふれるほどの愛を注いでくださるから、わたしたちはその愛を周りの人と分かち合うことができるのです。
 今年の年間聖句、わたしたち一人一人が心に留め、歩んでいけたらと思います。

バナースペース

勤務地:日本聖公会 奈良基督教会
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〒630-8213
奈良市登大路町45

TEL 0742-22-3818

牧師:司祭マタイ古本靖久
副牧師:司祭エレナ古本みさ