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日ごとの聖書

ショートメッセージ 〜2024年5月1日〜10日

5月 1「使徒言行録221721
 すると、主は言われました。『行け。わたしがあなたを遠く異邦人のために遣わすのだ。』
(使徒言行録22章21節)
パウロの弁明は続きます。彼はエルサレムにいたときに、「我を忘れた状態」になったといいます。聖書には恍惚状態になって異言を語る人も出てきますが、神さまが直接語り掛けられるときにはそのようになるのでしょうか。
パウロは神さまからこのように言われたと、はっきり言います。「エルサレムから出て行きなさい」と。それは神さまについてパウロが証しすることを、エルサレムの人々(ユダヤ人)が受け入れないからだと言います。
さらにパウロは、神さまは直接自分に語り掛け、異邦人の元に遣わされたと語ります。あなたたちユダヤ人と同じようにキリスト者を迫害していたわたしだが、神さまが直接遣わされたのだと語るのです。この言葉をユダヤ人は、「冒涜」と感じたかもしれません。
5月 2使徒言行録222230
 これを聞いた百人隊長は、千人隊長のところへ行って報告した。「どうなさいますか。あの男はローマ帝国の市民です。」
(使徒言行録22章26節)
パウロはここで、伝家の宝刀を抜きます。パウロは自分がローマの市民権を生まれながらにして持っていることを伝えたのです。当時、世界で大きな勢力を誇っていたローマ帝国の市民であることは、大きな後ろ盾となりました。
実際大隊長は、多額のお金を出してローマの市民権を得たそうです。しかしパウロはなぜ、そのことを今まで黙っていたのでしょうか。市民権のことを口にすれば人々の態度が変わるということを、パウロは知っていました。
しかし最後まで、地上の権威には頼りたくなかったのかもしれません。でもこのまま拷問にあうことで福音を宣べ伝えられなくなることは、どうしても避けたいことでした。ギリギリのタイミングで、パウロは市民権のことを語ったのでした。
5月 3使徒言行録2315
 パウロは言った。「兄弟たち、その人が大祭司だとは知りませんでした。確かに『あなたの民の指導者を悪く言うな』と書かれています。」
(使徒言行録23章5節)
ローマの大隊長は、自分でパウロを裁くことをためらいました。イエス様も逮捕されたとき、ユダヤの大祭司からポンティオ・ピラトの元に身柄を移され、最終的には群衆にその判断が委ねられました。
パウロの場合は、ローマの市民権を持っている人間を簡単には裁けないという理由がありました。そこでユダヤの祭司長や最高法院の議員たちの前に連れて行くことにします。どのような罪を彼らがパウロに定めるのか、知ろうとするのです。
そこでパウロは大祭司アナニアに向かって、「白く塗った壁よ」と言います。見かけだけきれいにして中身はどうなんだという強烈な皮肉です。パウロは「あなたが大祭司だとは知りませんでした」と言いますが、恰好を見ればすぐにわかったはずです。
5月 4使徒言行録23611
 パウロがこう言ったので、ファリサイ派とサドカイ派との間に論争が生じ、最高法院は分裂した。
(使徒言行録23章7節)
ユダヤ教には、大きな二つの勢力がありました。一つはファリサイ派、もう一つはサドカイ派です。パウロはファリサイ派に属していました。この二つのグループには同じユダヤ教であるにもかかわらず、相容れないことがありました。
それはサドカイ派がモーセ五書と呼ばれる創世記から申命記までを正典として認めていたのに対し、ファリサイ派は旧約聖書全体を受け入れていたということです。そのためダニエル書やイザヤ書はファリサイ派だけが正典としていました。
その結果、サドカイ派は天使も復活も霊もないのだと考えていたのです。パウロはそのことを当然知っていました。あえて復活を話題にすることで議会の混乱を狙ったのかはわかりませんが、ファリサイ派の人たちは結果的にパウロ寄りになったようです。
5月 5使徒言行録231215
 夜が明けると、ユダヤ人たちは陰謀をたくらみ、パウロを殺すまでは飲み食いしないという誓いを立てた。
(使徒言行録23章12節)
ユダヤ人のパウロに対する怒りはすさまじかったようです。復活の話をしたときにはサドカイ派とファリサイ派の対立を招きましたが、また一致団結してパウロの殺害を願っていきます。
40人以上の人が、「パウロを殺すまでは飲み食いをしない」と誓いました。そもそも殺人は、律法で禁止されていたはずです。パウロは神を冒涜した極悪人だから、命を奪ってもよいと考えたのでしょうか。
40人もいれば、誰か一人ぐらい違う意見を持ってもよさそうです。しかし怒りという感情は目を曇らせ、正しいものを見えなくするものです。彼らは祭司長や長老たちに、自分たちの思いを強く訴えます。
5月 6使徒言行録231622
 しかし、この陰謀をパウロの姉妹の子が聞き込み、兵営の中に入って来て、パウロに知らせた。
(使徒言行録23章16節)
パウロには姉妹がいたようです。そしてその子(パウロの甥)は、ユダヤ人の中に不穏な動きがあるのを聞き、それをパウロに知らせます。その甥も、キリスト者として導かれていたのでしょうか。
彼はローマの兵営の中に入ってパウロにこのことを知らせますが、その行動はかなりの危険を伴っていたことでしょう。下手をすると捕らえられたかもしれません。しかしそのような危険を冒してまでも、パウロを守ろうとしたのです。
パウロの甥である若者は、大隊長に会うことを許されました。大隊長もきちんと話を聞いたようです。彼にはパウロを守りたいという気持ちよりも、もめ事を起こしたくないという気持ちの方が強かったのかもしれませんが。
5月 7使徒言行録232330
 この者がユダヤ人に捕らえられ、殺されようとしていたのを、わたしは兵士たちを率いて救い出しました。ローマ帝国の市民権を持つ者であることが分かったからです。
(使徒言行録23章27節)
大祭司の決断は三つでした。一つは夜のうちにパウロを護送するということです。ユダヤ人たちがパウロの引き渡しを訴え出る前に行動することで、トラブルを回避しようとしたのです。
二つ目は護送を守る兵を配置したということです。歩兵200名、騎兵70名、軽装兵200名という数は、ユダヤで誓いを立てた40名に比べるとかなりの人数です。手を出すことすらためらうような兵を、パウロの護衛としてつけました。
そして三つめは、総統フェリクスに手紙を書くということです。彼はパウロを鞭で打とうとしていたにもかかわらず、「兵士たちを率いて救い出しました」と書いています。自らの保身を考えて書かれた文章のように見えます。
5月 8使徒言行録233135
 「お前を告発する者たちが到着してから、尋問することにする」と言った。そして、ヘロデの官邸にパウロを留置しておくように命じた。
(使徒言行録23章35節)
パウロはエルサレムからカイサリアに連行されました。彼を連行したのは、ローマ兵です。そして総督フェリクスに引き渡され、ヘロデの官邸に留置されました。パウロの身の安全は、一旦保障されました。
ユダヤ人の手からパウロを守ったのは、ローマ兵だったということになります。考えてみると、奇妙な話です。ローマの市民権を持っているから、パウロは守られたのでしょうか。それもあると思います。
しかしそれ以上に、神さまの導きを感じます。わたしたちにも「思いがけず」良いことが起こったり、「思いがけず」意図しなかった道に進んでしまったりということが、あると思います。その背後には、神さまの導きがあるのです。
5月 9使徒言行録2419
 実は、この男は疫病のような人間で、世界中のユダヤ人の間に騒動を引き起こしている者、『ナザレ人の分派』の主謀者であります。
(使徒言行録24章5節)
ヘロデの官邸にいるパウロの元に、大祭司アナニア、長老たち、弁護士テルティロがやってきました。それはパウロが到着してから5日後のことです。きっといろいろ作戦を立てていたのでしょう。
最初にテルティロが語ったのは、総督フェリクスに対するお世辞でした。社交辞令なのかもしれませんが、まず総督のご機嫌を取って自分たちの言いたいことを言うのです。わたしたちもそういうことをすることはないでしょうか。
そしてパウロのことを「疫病のような人間」だと、訴えます。確かにパウロによって自分たちにとっては厄介な考えが広まったのは事実です。福音の伝達がこのように言われるのは、ちょっと心外です。
5月 10使徒言行録241015
 更に、正しい者も正しくない者もやがて復活するという希望を、神に対して抱いています。この希望は、この人たち自身も同じように抱いております。
(使徒言行録24章15節)
大祭司アナニアと長老たちの強い思いを、弁護士テルティロは述べました。それに対して、パウロは総督フェリクスの前で弁明します。言い訳ではなく弁明です。真実を正直に語っていくのです。
パウロがエルサレムに来てから、わずか12日しか経っていないとパウロは語ります。しかし思い返してみるとイエス様は、日曜日にエルサレムに入り、次の金曜日には十字架につけられていました。
反対者からすると、その日数は全く関係ないのかもしれません。エルサレムに入る前から邪魔だと思っていたからこそ、ありとあらゆる理由をつけて、追い詰めようとするのです。しかしパウロは真っ向から、「弁明」していきます。

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